
カーボンニュートラルを実現するためには、原子力の活用は不可欠です。
但し、技術的な課題だけでなく、法整備や安全性への理解等が必要であり、すぐに実現するものではありません。
とはいえ、原子力活用の検討は進んでいますので、動向をチェックしてきましょう!
この記事を読むことで、
✓ 原子力による電源の脱炭素化への貢献 がわかる
✓ 原子力による製造部門における熱利用・水素製造への貢献 がわかる
原子力発電所の現状

日本の原子力発電の稼働状況はどうなっているの?

2022年6月現在では、10基が稼働しています。

詳細は過去の記事で紹介しています。
2022年6月2日に中国電力島根原発2号機(松江市)の
再稼働に向けた地元同意の手続きが完了したと公表されています。
全国で唯一、県庁所在地にある中国電力島根原発2号機(松江市)について、島根県知事は、再稼働に同意すると表明しました。
これで地元同意の手続きは完了し、10年あまり運転が止まっていた2号機は、早ければ2023度にも再稼働する可能性が出てきました。
島根原発2号機は、事故を起こした東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型炉(BWR)で、東日本大震災後に再稼働した例はありません。
実際の再稼働に必要な工事完了は2023年2月の予定で、他の原発の状況次第では、震災後初となるBWRの再稼働となる可能性があります。
朝日新聞
全国で唯一、県庁所在地にある島根原発2号機 再稼働に知事が同意
https://www.asahi.com/articles/ASQ616SJ9Q5YPTIB006.html

原子力発電におけるBWR方式の再稼働に期待が高まっています。
BWRなどの方式については、過去の記事で紹介しています。
原子力による電源の脱炭素化への貢献

原子力発電の比率向上によって、脱炭素はどの程度進むの?

2022年3月28日に開催された
第25回 総合資源エネルギー調査会 電力・ガス事業分科会 原子力小委員会
の資料から見ていきましょう。
経済産業省
エネルギーを巡る社会動向と原子力の技術開発
https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/denryoku_gas/genshiryoku/pdf/025_03_00.pdf
発電種類別のライフサイクルCO2排出量のグラフがこちらです。
発電のライフサイクルとして、発電燃料燃焼のみではなく、設備の建設や廃棄、燃料の採掘・輸送・加工・産業廃棄物処理なでおの発電部門のサプライチェーン全体を包括しています。

発電種類毎に見てみると、最も高いのは石炭火力になっています。
CO2は、主に石油や石炭、天然ガスなどの化石燃料を燃やすことで発生します。(グラフのオレンジ色の部分です。)
化石燃料を使う火力発電は、発電の過程でCO2を排出します。
一方で、ウラン燃料の核分裂で発生した熱エネルギーを利用する原子力発電は、発電の過程でCO2を排出しません。

原子力は運転時にCO2排出しないこと、
発電種類毎のライフサイクルCO2排出量が低水準
であることがわかります。
100万kWの発電量を得るための面積はこちらです。


国土が限られる日本にとって、太陽光や風力といった再生可能エネルギーのみでは限界があります。
原子力発電では、現状の火力発電とほぼ同等の面積で同量の発電が可能であり、
カーボンニュートラルの実現には、再生可能エネルギーの導入と共に
原子力の活用が必要です。

カーボンニュートラル実現の為には化石燃料の代替が必要です。
原子力には安定的な燃料の供給が可能という特徴があり、
化石燃料の代替として最も有力です。
原子力発電所(100万kW)の年間発電量を代替する場合に必要な燃料はこちらです。

ウランはエネルギー密度が高く、同じ量の電気をつくるために必要な燃料が、石油や石炭、天然ガスなどに比べて桁違いに少ない量で済みます。
このため、輸送や貯蔵が便利であるという特徴もあります。
原子力発電の燃料になるウランも、石油や石炭、天然ガスなどと同様に海外から輸入されています。
ウランは、石油や天然ガスにみられるような中東などの特定地域への偏在がなく、世界各地に分布しています。
ウラン資源の埋蔵量(2019年1月現在)のグラフがこちらです。

国内在庫日数はこちらです。

2021年10月末現在、日本では、国家備蓄と民間備蓄などで244日分の石油が備蓄されています。
また、天然ガスは備蓄を保持していくことが難しいため、供給が途絶えることがないようにする必要があります。
これに対し、原子力発電所では、ウラン燃料を一度、原子炉の中へ入れると、1年間以上は燃料を取り替えずに発電できるので、その期間は燃料を備蓄しているのと同じような効果があります。

ウランは燃料投入量に対するエネルギー出力が大きく、エネルギー密度が高いこと、
供給国の多様化が可能であり、かつ備蓄にも優れており供給安定化を図れること
といった特徴があります。
一般財団法人 日本原子力文化財団
原子力発電の特徴
https://www.jaero.or.jp/sogo/detail/cat-02-06.html
原子力による製造部門における熱利用・水素製造への貢献

原子力って発電以外にも利用方法があるの?

熱利用としても注目されています。
その内容を見ていきましょう。

まずは、日本のエネルギー消費を確認します。
日本におけるエネルギーの使い方(最終エネルギー消費)は電気が約1/4で、
残りは化石燃料を主体とする熱・燃料(原料含む)となっています。

日本の最終エネルギー消費量の45%は産業分野で消費されています。
その産業分野における現状の課題と、今後の取り組みがこちらです。


素材産業におけるカーボンニュートラルに向けては、
水素還元製鉄や熱・電力のカーボンフリー化が必須になっています。
そのため、CO2を排出しない大量・安価かつ安定的な水素・熱・電力の供給が求められています。
水素の製造方法の取り組みがこちらです。


カーボンニュートラルに必要不可欠な水素を製造するために、
熱源を必要としたCO2を排出しない方法の研究が進められています。
原子力は安全性を向上させる方法が研究されています。
その一つに高温ガス炉というものがあり、その排熱を利用することが考えられています。


高温ガス炉を含めた、現在研究されている方法は別記事で紹介予定です。
原子力(高温ガス炉)を利用した水素製造のイメージがこちらです。

水素還元製鉄


水素を活用した高炉における水素還元技術および
CO2分離回収技術などにより、製鉄プロセスからCO2排出量
を30%以上削減する技術の実装を目指しています。
NEDO
高炉を用いた水素還元技術の開発
https://www.nedo.go.jp/content/100940993.pdf
高温ガス炉の活用により、カーボンフリーで大規模・安定の水素製造が可能となります。


原子炉(高温ガス炉)の排熱を活用して水素を製造することで、
製造部門に必要な電力と水素を供給することができ、
カーボンニュートラルに貢献ができます。

原子炉はまずは既設の再稼働、
その後に革新的な方法による新規導入ということを目指して、
安定した革新的な方法の研究が進んでいます。
別記事で、革新的な方法をチェックしたいと思います。
コメント